プロペラ機にのって・・・

今、オーストラリアの環境教育関連の学会に参加するために、キャンベラに滞在しています。
オーストトラリアの経済・文化・流通の中心は、ご存じ、シドニー(人口約442万人)ですが、政治の中心である首都は、キャンベラ(人口約30万人)です。1901年にオーストラリアが英国から独立したときに、シドニーとメルボルンで首都の座を争った結果、中間地点である、キャンベラが首都に決まった経緯があります。
ブラジルの首都、ブラジリアと同様に自然発生的に出来上がった都市ではなく、建築家ウォルター・バーリー・グリフィンにより設計された人工都市であり、大自然のイメージのオーストラリアらしかない風情です。
日本からの直行便がなく、シドニーを経由してキャンベラに入りました。シドニーからキャンベラへのフライトは、ジェット機でなく、プロペラ機でした。
ジェット機よりも低い高さをゆっくりと飛行するので、地上の景観をじっくりを見ることができ、遊覧飛行を楽しんでいるようでした。
このプロペラ機の”ゆっくり飛行”(尤も地上の自動車よりも断然早いのですが・・・)を堪能した後、重大な問題がおこるとは予想もせず・・・。
キャンベラ空港で、預けたスーツケースがベルトコンベアーから出てくることを待て暮らせども、出てこず。「シドニー便の荷物はもう無いよ」と近くにいた職員が事務的に一言。
「あぁぁ~ロスバケだ~!」
※エアカナダでロスバケして以来、生涯、通算2度目。
「ロスバケ」とは、旅行業界用語で、「ロストバゲージLost Baggage」の略語で、到着地の空港で荷物が紛失してしまうこと。
バゲージクレームの窓口に、まさに”クレーム”を言いにいったところ、「シドニーでの乗り継ぎ時間が短かったからねぇ~。次の便か、その次の便にあると思うよ。まぁ、明日までに見つかるんじゃな~い。」と。カナダでロスバケしたときも、大陸的というか、大らかというか、のんびりした対応に驚かされたが、オーストラリアもやはり”大陸的な”対応だ~~。
出所は忘れてしまったが、日本人のお母さんが子どもに最も頻繁に言うセリフが「もっと早くしなさい!」だそうです。宅配便を出すと、盆、正月、クリスマスお構いなく、日本全国津々浦々、翌日に配達されるような迅速サービスに慣れてしまい、「効率が良いことは、良いことだ」という、モダン的な価値観が、人知れず骨身にしみ込んでしまっているかもしれません。「ロスバケ」に、天変地異が如く、大騒ぎしたことをちょっと反省。
今一度、辻信一さんの「スロー・イズ・ビューティフル―遅さとしての文化 (平凡社ライブラリー) 」を、再読し、その精神を実践しなければと肝に銘じるのでした。
Ps
南半球で季節が真逆なキャンベラのかの地、最低気温が氷点下になる環境で、Tシャツだけしか着る物がなく、髭も剃れない生活はちょっと御免こうむりたいと、経験から編み出した門外不出の「ロスバケ危機対応マニュアル(?)」を実行させることで、「Rush」タグのついた、赤いスーツケースにキャンベラのホテルで、その日の夕食前に無事に再会することができました。おしまい。

スロー・イズ・ビューティフル―遅さとしての文化 (平凡社ライブラリー)